Vol.6 価値あるモノづくりを支える人づくりと「活エネルギー」

CO2削減といった地球環境の保全活動や、急激に変化する経済動向への対応など、今の企業が抱える課題は多岐にわたります。「エネルギー提言」では、企業経営における重要な課題、エネルギー活用について各界のリーダーのインタビュー記事を掲載しております。
今回は、経済アナリストであり、獨協大学教授を務める森永卓郎さんをお迎えしました。明快な語り口で経済を鋭く斬るコメンテーターとしても活躍する森永さんに、今の日本経済に起きていること、省エネなどの環境対策の必要性、中部電力の役割など、さまざまなお話をうかがいました。

サブプライムローン(低所得者向け住宅融資)問題をきっかけに、今、経済が揺らいでいます。こうした状況を招いたのは、この四半世紀の経済。私は、この四半世紀は金融戦国時代だったと考えています。ある日突然、知らない人が乗り込んできて会社を乗っ取り、従業員を解雇する。そして、会社の資産を売り払って配当金を受け取ると、株価が高いうちに売り逃げる。そういうことが散々行われてきました。
戦国時代といえばテレビドラマでもよく取り上げられますが、武士階級の視点で描かれているものがほとんどで、庶民のことはよくわかりません。確かに武将たちの物語はドラマティックですが、あの時代の庶民は幸せだったのでしょうか。私は違うと思うんです。戦争をしている時、庶民が幸せだということはありえませんから。ですが、戦国時代のあとには、260年間も安定した世の中が続く江戸時代がやって来ます。最近ある経済学者の研究で、江戸時代になった当初は混乱期があったものの、混乱が収まったあとは高度経済成長を迎えたことがわかりました。それは破壊や略奪を繰り返し、資源も大量に使う戦国時代が終わったことで、人や資源がさまざまな産業に集まってきたからなんです。
「サブプライムローン(低所得者向け住宅融資)問題をきっかけに、今、経済が揺らいでいます」

金融戦国時代が終わりつつある今、これからの日本は江戸時代を見習うべきです。私が江戸時代を評価する理由はいくつかあります。
まず、人々が暮らしに役に立つ技術や産業に真面目に取り組み、高度経済成長を迎えたこと。次に、当時は一日の労働時間が短く、ゆとりがあったこと。そういったことが、元禄文化などの江戸文化を生み出しました。そして、環境にやさしい時代であったこと。人々はモノを大切に使っており、リデュース(Reduce:廃棄物を出さない)・リユース(Reuse:再利用)・リサイクル(Recycle:再資源化)がきちんと行なわれているシステムがあって、資源を有効に活用していました。
現代の企業にとって不可避の課題、資源の有効活用は、江戸時代の人々にとっては当たり前のことだったんです。

私は、企業が省エネなどの環境対策に取り組むことは、コストと社会的評価という2つの面でも必要だと考えています。
その理由を、まずコストの面からお話しましょう。コスト削減の取り組みといえば、コピー用紙は両面使う、照明はこまめに消して節電するといった細かい活動が行われています。もちろん、こうした取り組みで資源のムダをなくすことは必要です。しかし、目先の節約にとどまらず「本当にエネルギーを効率よく使っているのか」という一歩引いた視点を持ち、ビルや工場全体の省エネを実現させる設備やシステムについても考えてほしい。
たとえばビルや工場にヒートポンプを導入するだけで、ケタ違いの消費電力が削減ができ、環境負荷低減に大きく貢献できます。初期費用はかかりますが、確実に消費エネルギーを減らすことができるし、耐久年数から考えても充分にペイできるので、利益にもつながります。環境対策投資と考えてヒートポンプを導入すれば、企業の得るメリットは大きいと思います。
これは、賃貸のオフィスビルであっても同じ。多くの企業は今、省エネに取り組んでいますから、省エネ設備を導入したビルには入居を希望する企業が増えます。それは、ビルのオーナーにメリットをもたらします。
「企業が省エネなどの環境対策に取り組むことは、コストと社会的評価という2つの面でも必要」

次に企業の社会的評価についてお話します。消費者は環境対策をきちんと実施している企業を評価します。環境のことを考えて事業活動を行う企業の製品を消費者が選ぶことにより、その企業の株価が上がります。株価が上がれば、安定的に資金調達ができるようになり、長期的な企業成長へとつながっていきます。
株式投資ではエコファンドも登場していますし、企業の環境対策はファンドマネージャーがどこの株を投資信託に入れるのか、その選択基準のひとつにもなっています。つまり、環境対策を行わない企業はマーケットからも相手にされなくなってしまうのです。
環境活動は、企業に大きなメリットをもたらします。省エネルギーなどによるコスト削減は直接利益に結びつくし、企業の社会的な信用も高まれば資金調達コストが下がって、それも利益につながる。これからの時代、長期的に企業が成長していくためには、環境対策を行う以外の道はなくなってきているといっても過言ではないでしょう。

京都議定書により、日本は地球温暖化の原因であるCO2などの温室効果ガスの削減を約束しています。基準年である1990年度と比べて6%の削減を目標にしていますが、実際にはCO2排出量が増えていることがわかり、「目標まで削減することは難しい。排出権を購入するしかない」という議論がされています。
しかし、私はかつての日本人の暮らしを考えれば、この目標達成は決して無理なことではないと思っています。考えてみれば、昭和30年代頃までの日本人は今のようにエネルギーをたくさん使っていませんでした。私が子どもの頃なんて家庭の契約アンペアが小さく、一度にいくつかの電化製品を使用するとすぐにブレーカーが上がってしまう、そういう時代でした。
だからといって、私は当時の暮らしに戻ることがCO2削減の道だといっているわけではありません。私の考えは、今と同じレベルの企業活動や便利な暮らしを維持しながら、技術の力で消費電力を昭和30年代のレベルまで抑え、CO2を削減していくこと。技術の力で環境対策を進めていくことをメインにすべきだと考えています。
「技術の力で環境対策を進めていくことをメインにすべきだと考えています」
その具体例のひとつが24時間営業のコンビニエンスストアです。「省エネのために営業時間を短縮してはどうか」という話が出ていますが、営業時間を短縮しなくても、照明器具をLEDに取り替えればいいんです。省エネ性に優れたLEDという技術の力で、24時間営業の便利さはそのままに、消費電力を抑えることができます。ただし、現状ではLEDの照明器具は一般的な蛍光管に比べて価格が高い。その課題をクリアすれば、一気に普及して省エネ効果が出ると思います。

モノづくりが盛んな中部地区は、高度な技術を持つ企業が多い地域。ですから、環境保全に貢献する新しい技術の開発やモノづくりをどんどん進めてほしい。そのために大切なことは、決して暗くならないこと。経営環境が厳しくなると、日本人はすぐに暗くなる。それは悪いクセです。私は、新しいアイデアは前向きに明るく生きている人から生まれると思っていますし、歴史を振り返っても暗い人間から新しいモノが生み出されたことは、恐らくないと思う。新しい技術やモノづくりを実現させるためにも、明るく、前向きな姿勢でいたいものです。

企業活動にはエネルギーは欠かせません。しかも、今求められているのは、企業の長期的な成長を見据えたうえで、いかに効率よくエネルギーを活用していくかを考えるエネルギーの戦略です。こうした企業のエネルギー戦略をいかにサポートしていくかが、電力会社に求められている重要な役割となっています。
常に最新の情報を集めて、どんなシステムや設備、技術があるのかを提示する。それぞれの企業に応じた最適なエネルギー活用法などを提案し、支援していく。それが、エネルギー活用の専門家である中部電力の責任であると私は思います。
「企業の長期的な成長を見据えたうえで、いかに効率よくエネルギーを活用していくかを考えるエネルギーの戦略です」
次回の更新は4月下旬を予定しています。 引き続き森永さんにエネルギー・ソリューションのための現場力と人づくりなどについてご提言いただきます。お楽しみに。
私たち中部電力は、お客さまの現場での課題をカスタムメイドで解決するエネルギー・ソリューションで、あらゆる企業活動を支援したいと考えています。