Vol.6 価値あるモノづくりを支える人づくりと「活エネルギー」

経済アナリストの森永卓郎さんにお話を伺う「エネルギー提言 vol.03」。後編では、日本の環境技術の話題、今後の企業経営のあり方などについてお届けします。これからの時代を生き抜くための企業経営とは? そして電力というエネルギーの可能性は?森永さんならではの視点、切り口で語っていただきました。

「エネルギー提言」の前編で、技術の力で環境対策を進めることが大切だという話をしました。
日本の環境技術は、圧倒的に世界をリードしています。たとえば、電化製品は10年前と比べて格段にエネルギー効率がよくなりました。最近では乾燥機能付きの全自動洗濯機、食器洗い乾燥機にもヒートポンプの技術が導入され、省エネに役立っています。
今話題の電気自動車は日本ではすでに1970年に販売されており、40年間にわたる技術やノウハウの積み重ねがあります。アメリカの自動車メーカー、GM社も2010年から電気自動車を生産するといっていますが、技術の蓄積なくして果たしてできるのでしょうか。日本から部品を調達すれば可能ですが、自力ですべてを開発できるようになるまでには、かなりの期間を要するでしょう。技術というのは、一朝一夕で開発できるものではないからです。
「日本の環境技術は、圧倒的に世界をリードしています」

電化製品や自動車のみならず、日本には優れた省エネ性能や環境技術を備えた製品がたくさんあります。私たち一人ひとりも「環境保全に貢献するんだ」という気概を持って、それらを備えた製品や設備を選び、効率よくエネルギーを使っていくべきです。それは省エネや環境保全につながるだけでなく、国内の需要を盛り上げ、日本の産業が栄えていくことにもつながります。技術は海外にも転用できますから、日本の産業が世界でプレゼンスを拡大することも可能になります。
地球環境の保全は世界が取り組むべき課題であり、日本だけが省エネやCO2削減に取り組んでも解決できるものではありません。だからこそ日本は今後も環境技術に取り組み、いっそう発展させていくべきです。そして技術を海外にどんどん輸出し、世界各国の省エネ対策や環境保全活動に貢献していく。それが、これからの日本の役割ではないでしょうか。

2009年2月16日に発表された2008年10〜12月のGDPは、前の四半期(2008年7月〜9月)に比べて3.3%のマイナス成長となっていました。これは年率換算にすると、12.7%のマイナスです。
アナリストたちの意見は「マイナス成長の原因は、外需が急減したせいである。日本の経済成長は輸出に依存しており、その輸出が急減したからGDPが大幅に落ち込んだ」ということで一致しており、私もその通りだと思います。
「嵐が過ぎ去るのをじっと待ちながら、本来の水準に戻った時のために準備をしておく。今はそういう時期」
ただ、日本の経済の危機は外需の急減だけではないというのが私の意見です。その理由は雇用者報酬(会社員が得た所得)のデータにあります。国民の消費支出も0.4%のマイナス成長で、民間企業設備投資の成長率も前期と比べて5.8%も下落しているのに、驚くべきことに雇用者報酬は1.0%増えているんです。これは、給料が増えたにも関わらず、消費や投資が落ちていることを意味しています。なぜ、このような事態が起きたのでしょうか。それは世界的な不況といわれ続け、この先どうなるかわからないという不安感から、お金を使えない雰囲気が世の中にまん延しているからなんですね。
しかし、必ず消費は戻ってきます。消費マインドが冷え込んでいる今は、天候でいえば嵐が吹き荒れているような状態。嵐が過ぎ去るのをじっと待ちながら、本来の水準に戻った時のために準備をしておく。今はそういう時期だと思います。

厳しい状況を乗り切るため、多くの企業では従業員の解雇や、生産ラインの稼働を減らす生産調整が行われています。従業員の解雇は、その人の中に蓄積されてきた技術や技能、ノウハウ、人脈といった財産を損失することにもなります。私は従業員の解雇に踏み切るより、株主への配当を一時的に減らし、利益が出た時に上乗せして払う方法が有効だと思います。
また、生産調整を実施するなら、極端かもしれませんが、思い切ってヨーロッパのように夏休みを1ヶ月くらい取るという方法もあると思います。夏休みが増えれば消費も盛り上がるだろうし、企業の省エネにもつながる。ヨーロッパの企業ができるんだから、日本でもできるはず。ただし、私の提案に賛同してくれる経営者は今のところいませんが(笑)。それはともかく、厳しい時代だからこそ、企業は価値観を変えて新しい方策を打ち出すことも必要ではないでしょうか。

ある調査によれば、長期的に繁栄している企業の多くは「従業員に自由に任せる」という特徴があるといわれています。その一例がアメリカのスリーエム社で、開発部門の従業員は労働時間の15%を自由に使えるそうです。そんな環境の中で生まれたのが、くっつかない接着剤。接着剤としては失敗作ですが、これが付箋紙のポストイットを生み出し、会社に莫大な利益をもたらしました。
企業が成長するためには、従業員一人ひとりが自分で考えて自由に取り組んでいくことも大切なんですね。もちろん自由には責任が伴いますから、真面目に取り組むことが必要になります。
これは省エネなどの環境活動も同じです。企業全体の環境対策やエネルギー戦略を考えるのは経営トップの役目ですが、重要なことは「環境を大切にしよう」という理念を従業員全員で共有すること。そして、従業員一人ひとりはトップが打ち出した戦略の中で「エネルギーのムダを減らすために、自分たちは何をすべきか」を考え、責任を持って日々実行していく。「環境を大切にする」という大きなルールのもと、一人ひとりが何をすべきかを考えて自主的に取り組んでいくことが大切だと思います。
「企業が成長するためには、従業員一人ひとりが自分で考えて自由に取り組んでいくことも大切」

先ほど電気自動車の話をしましたが、今アメリカでは「最終的に自動車は、電気自動車になる」といわれています。実際には、ガソリンスタンドならぬ電気の充電スタンドの設置、充電時間の短縮化といった課題がありますが、それは重要なことではありません。注目すべきはエネルギーコストです。ガソリン自動車は、燃費のいい車種でも1km走行あたり約10円ですが、電気自動車は1km走行あたり約1円。エネルギーコストが1ケタ違います。それに加え、自動車が電気で走るようになればCO2削減にも役立ちます。
現在は化石燃料をエネルギーとして使用しているものが、将来的には電気に変わっていくことも考えられます。電気というエネルギーには可能性が広がっていると思います。
電気をつくる発電方法には、発電時にCO2を出さない原子力発電、自然エネルギーを活用する太陽光発電や風力発電などがあり、地熱発電などの新しい技術もあります。将来、これらの発電方法を組み合わせて電気の安定供給ができるようになれば、発電に石油などの化石燃料を燃焼させる必要がありません。それは、大幅なCO2削減になります。環境保全の面でも大きな可能性を持っている、それが電気というエネルギーだといえるでしょう。
「電気というエネルギーには可能性が広がっていると思います」
私たち中部電力は、お客さまの現場での課題をカスタムメイドで解決するエネルギー・ソリューションで、あらゆる企業活動を支援したいと考えています。