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価値あるモノづくりを支える人づくりと「活エネルギー」〈前編〉経営コンサルタント・山田日登志さん

山田日登志さんプロフィール

「エネルギー提言」では、企業活動において重要な課題のひとつであるエネルギー活用の話題を中心に、各界リーダーのインタビュー記事を掲載しています。
今回のゲストは、経営コンサルタントであり、PEC産業教育センター所長の山田日登志さん。 東日本大震災で深刻な打撃を受けた日本経済の一刻も早い復興が望まれますが、これまで多くの製造業の現場と向き合い続けてきた山田さんに、これからの社会を支えるより豊かなモノづくりをおこなっていくための製造現場のあり方やエネルギーとの関わりについて話をうかがいました。

※インタビューは3月8日におこなわれました。

東日本大震災を受けて―山田日登志

日本のみならず、世界中を震撼させた3月11日の東日本大震災で、お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された皆さまに、心よりお見舞申し上げます。
日本の科学や技術を駆使してつくられた施設や建物が自然の猛威に屈し、人々に大きな不安を与えています。
これまで、物質的な豊かさと便利さを求めて経済至上主義を走り続けてきた日本にとって、大きな転機がやってきたのではないでしょうか。 今後、東北地方のみならず、日本全体が復興を目指す上で重要になるのは、一人ひとりが生き生きと働ける社会、そして、そういう大人を見て子どもたちが夢を描ける社会です。 未来へ向けて、真の豊かさとは何かを、それぞれがみずからの心に、問い直すべき時なのかもしれません。

モノづくりの現場

1970年代、日本経済に打撃を与えたオイルショックの後、経済界の話題をさらったのは、トヨタ自動車工業(当時)が取り組むトヨタ生産方式でした。 不況からいち早く復活を果たしたトヨタ自動車に対して各界では、トヨタ生産方式を象徴する、在庫を持たないための生産スタイル「かんばん方式」にその秘密があると注目したのです。
1971年、私はトヨタ生産方式の創始者、故・大野耐一先生の講演を聞く機会に恵まれました。 人手不足に悩む岐阜県の各企業にとっても、工数低減できる絶好の方法であることを知り、研究を続けてきました。
種々の企業を対象に検証すると、予想以上の工数低減が可能となり、このしくみや考え方を広めようと1978年「PEC産業教育センター」を設立。 人伝に評判となり、トステム(現 LIXIL)やソニー、NEC、キヤノンなどの大手企業を含めて、現在までにおよそ350社の現場改善を手掛けてきました。
大野先生にお会いした当時、先生は「限量経営」という言葉を唱えていらっしゃいました。 売れるモノを売れる分だけつくるという考え方ですが、モノには限りがあるということを常に考えておられたのでしょう。
しかしながら世間では、大量生産・大量消費こそ人間を豊かにするという錯覚のもとで、モノをつくり続けた結果、“モノ余り”時代が到来しました。 価格競争と新製品開発が製造業を苦しめ、モノづくりが軽んじられ、ますます元気のない製造現場が日本中に増えてしまったのです。

山田日登志さんの写真

大手企業を含めおよそ350社の改善を手掛けてきたという山田日登志さん

地域特性や個別のニーズに合ったモノづくりを

安いモノを大量につくるのは、19世紀や20世紀のモノづくりの考え方。 私は、それを21世紀まで引きずっていることに、製造業不況の元凶があるように思います。 これからの製造業は、安価なモノを大量につくるという発想から、価値のあるモノを生み出し、売るといった発想に転換するべきです。 消費者の立場としては、標準品であれば安い方がいい。 しかし、一方で、そのモノにしかない価値を感じれば、喜んで高い金額でも購入するわけです。 例えば、コンビニで買って飲むコーラも一流ホテルのロビーで飲むコーラも味は同じ。 でも、一流ホテルの空間やもてなしなどの特別感がプラスされているからこそ、高いお金を払う。 同じ洋服でも「女優が着ていた服です」と言えば、10万円でも100万円でも、そこに価値を感じ購入する人がいるのです。

自動車メーカーに置き換えるなら、世界各国に向けて同じ車を製造して売り続けることが、果たして最善策なのかどうかということです。 例えば、砂漠の中を走り続けても壊れない熱帯地域で活躍できる専用車や、氷の中を突き進むことができる北極用の車など、地域特性や個別のニーズにかなった価値あるモノづくりが、今後は必要なのではないでしょうか。

“みずから考える人”としての消費で豊かな社会に

以前、法隆寺の宮大工棟梁だった故・西岡常一さんとお話する機会に恵まれた時のことです。 西岡さんが「今の世の中、モノづくりしている方は幸せですね。 1年で壊れるようなモノでも喜んでもらえるし、楽しんでつくっている。 私たちは千年後まで残る建物をつくらなくてはいけないですから、命がけです」と話してくださったことを、とても鮮明に覚えています。 薬師寺西塔の再建を手掛けられた時には、今残っている東塔より西塔を1mほど高く建立したという裏話を披露してくださいました。 理由をたずねると「千年経ったら、同じ高さになるはずです。 私の勘ですけどね」とお答えになられた。 これこそ真のモノづくり、真の品質管理だと思いました。

山田日登志さんの写真

「価値あるモノを見抜いて消費する目を養うことも大切です」

もちろん我々一人ひとりが、価値あるモノを見抜いて消費する目を養うことも大切です。 私は、“大衆”と“市民”の決定的な違いは“みずから考える人”かどうかという点だと考えています。 権威や権力に引きずられる人は“大衆”、権威や権力に対して自分の意見を持てる人が“市民”。 他者にとってよいモノが、自分にとって最良とは限りません。 一人ひとりが“市民”としての意見を持ち、自分なりの価値基準を持った人がもっと増えれば、消費が変わり、もっと豊かな社会になるのではないでしょうか。

ベルトコンベヤーを撤廃し、ムダを省く

そのような”豊かな消費”に相応しい、21世紀型のモノづくりを実現するために取り組んできたのが「ムダとり」や「改善」です。 ジャスト・イン・タイム、つまり“お客様の必要なものを、必要な時、必要なだけ”という考え方を可能にするために、まず私が行ったのは工場からベルトコンベヤーをなくすことでした。 大量生産の象徴ともいえるこの装置は、作業者のペースではなく、ベルトコンベヤーの動きに合わせて作業が進んでいくので、次の工程でさばき切れない仕掛品や不良品が山積みになっていく。 現在の多品種変量生産方式が要求される製造現場では意味をなさない遺物なのです。 ベルトコンベヤーを外すことで、作業者同士の距離が近づき、製品を手渡しすることで工場内の移動や時間のムダを省くことができました。

山田日登志さんの著書

「ムダとり」や「改善」をテーマにした数々の著書は製造業に携わるビジネスパーソンの大きな支持を得ている

活人、活スペースの先にある「活エネルギー」

ベルトコンベヤーを撤廃することで工場内には広大なスペースが生まれ、作業者同士の距離を縮める「間締め」を行えば、さらに人員を減らすこともできます。 「一人屋台生産」や「セル生産」では、仕掛品を極力抱えないスタイルのため、余分な在庫をストックしておくスペースもいらなくなる。 そのように、徹底的にムダをなくして生み出された空間を、有効に活用することを私は「活(かつ)スペース」といっています。

例えば、今まで10m²使っていた場所を9m²にして同じ生産工程が可能になれば、新製品づくりを試すスペースにしたり、倉庫として貸したり、新たな収入源を生む場所として活用できます。 また、製品完成までに携わっていた人員を5人から4人に削減し、手薄になっている別の部署や他の作業工程の応援にまわしたり、新規事業の立ち上げに人材を活かしたりするという考え方が「活人(かつじん)」です。 このような手法や考え方は、エネルギーを有効に活用する、いわば「活(かつ)エネルギー」にもつながりますよね。

山田日登志さんの写真

「徹底的にムダをなくして生み出された空間を有効に活用することを活スペースといっています」

「活エネルギー」の表彰で意識改革

「活エネルギー」の考え方を広く浸透させるためには、エネルギーを上手に使っている、企業や学校をはじめ、「活エネルギー」により豊かに暮らしている家庭、人物などを表彰するようなコンクールを実施するのも、私は一つの手だと思っています。

中部電力のように、エネルギーを通じて企業に提案を行っている会社が主体となって、エネルギーを上手に活用する企業を顕彰し、それをわかりやすく浸透させるためにシンボルを発信していく。 それにより、エネルギーの使い方に関する意識を変えていくことが大切なのではないでしょうか。
「活エネルギー」のコンクールというだけで楽しそうでしょう。 仕事でも何でも楽しく、やりがいがなければなりません。このコンクールが実現するなら、私もぜひ参加したいと思います。(笑)

山田日登志さんの写真

「エネルギーの使い方に関する意識を変えていくことが大切です」

後編につづく

この続きである後編の公開は11月上旬を予定しています。 次回は、山田日登志さんにモノづくりの現場で大切な人づくりやエネルギー活用についてご提言いただきます。 お楽しみに。

【 中部電力から皆さまへ 】

私たち中部電力は、お客さまの現場での課題をカスタムメイドで解決するエネルギー・ソリューションで、あらゆる企業活動を支援したいと考えています。

バックナンバー

エネルギー提言vol6

Vol.6 価値あるモノづくりを支える人づくりと「活エネルギー」

エネルギー提言vol5

Vol.5 自然と共存する社会をつくる環境活動とエネルギーの未来

エネルギー提言vol4

Vol.4 成長する企業の条件と、エネルギーの未来

エネルギー提言vol3

Vol.3 経済成長と環境保全に貢献するエネルギーの可能性

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