Vol.6 価値あるモノづくりを支える人づくりと「活エネルギー」

国際情勢や経済状況など、日本の企業を取り巻く環境は刻々と変化しています。
そのような時代で直面した未曾有の東北大震災。
苦境から立ちあがり、日本経済が復興を目指すために今、製造現場に求められる姿とは―。
6回目となる今回は、300社を超す製造業の改善を手掛けてきた経営コンサルタントの山田日登志さん。
前編では、これからのモノづくりのあり方とエネルギーを有効利用する「活エネルギー」について語っていただきました。
後編では、山田さんが豊かな社会の根源であると唱える“人づくり”とエネルギーについてうかがいます。
※インタビューは3月8日におこなわれました。
日本のみならず、世界中を震撼させた3月11日の東日本大震災で、お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された皆さまに、心よりお見舞申し上げます。
日本の科学や技術を駆使してつくられた施設や建物が自然の猛威に屈し、人々に大きな不安を与えています。
これまで、物質的な豊かさと便利さを求めて経済至上主義を走り続けてきた日本にとって、大きな転機がやってきたのではないでしょうか。
今後、東北地方のみならず、日本全体が復興を目指す上で重要になるのは、一人ひとりが生き生きと働ける社会、そして、そういう大人を見て子どもたちが夢を描ける社会です。
未来へ向けて、真の豊かさとは何かを、それぞれがみずからの心に、問い直すべき時なのかもしれません。

前編でお話したように、仕掛品や不良品のムダを省くために私がまず着手したのは、ベルトコンベヤーの撤廃です。 そして次に挑戦したのが、「一人屋台生産」方式や「セル生産」方式です。 「一人屋台生産」方式とは、組み立てから始まり、検査、箱詰めなど一つの製品が完成するまでのすべての工程を一人に任せるシステムです。 また、全工程を少人数のチームで担当し、ひとつの製品を組み立てていくのが「セル生産」方式。 これらの方法により、最初はコツがつかめず戸惑っている人も、早く製品を完成させるために試行錯誤して進めるようになる。 速度が一定で単純作業だけを続けるベルトコンベヤーでは引き出せなかった、個人の工夫や考える力によって、生産性は3倍、5倍と格段に上がりました。
「20世紀型の分業制は、製造業で働く人々にモノづくりの楽しさを忘れさせてしまったといえるでしょう」
さらに、「一人屋台生産」や「セル生産」は、生産性の向上という数値的な成果だけではなく、作業者の意識にも大きな変化をもたらしました。
従来の分業制、単純作業においては、テレビや自動車など完成した製品に関する知識は必要とされなかった。
ただビスをしめる、ただタイヤを差し込むという作業の繰り返し。
20世紀型の分業制は、製造業で働く人々にモノづくりの楽しさを忘れさせてしまったといえるでしょう。
しかし、それぞれが様々な工程に携わる「一人屋台生産」や「セル生産」を取り入れることで、従業員の目の輝きは変わりました。
みずから知恵を絞ることで生産性が明らかに良くなり、自分がつくった製品がどのように消費者の手元に届き、使われるのかを想像することでモノづくりの喜びを実感していったのです。

各企業の経営改革のために「一人屋台生産」方式や「セル生産」方式など、さまざまな手法を実践してきましたが、私の取り組みの柱は工場の再建ではありません。
あくまでも根本にあるのは、働く人の意識改革です。
例えば、意識改革のために私がおこなう指導の一つに「腹から声を出すこと」と「あいさつをすること」があります。
学歴や役職に関係なく、一つのことを究めると人間は自信を持てるようになるものです。
声の大きさでもいい。
気持ちの良いあいさつでもいい。
どんなにあたり前のことでも、とことん突き詰めて取り組み、達成することで一人ひとりが自信を持ち、工場内に活気が生まれる。
そこで働く人々が世の中にとって役立つ人材に変化していくと、結果として生産性が上がり、工場が再生されていくという様をこれまで目の当たりにしてきました。
もう一つ、掃除も大事ですね。
整理整頓ができないとムダは見えてこないですし、トイレ掃除のように、人が嫌がることを率先してできる人間こそ成長していくと信じています。

将来の日本を見据えるのであれば、経営者を育てるための人材教育を推進することも必要でしょう。 現在のように、義務教育から大学教育まで画一的な教育を推し進めるのではなく、個性のある人間を育てる教育システムを小学生時代から構築する。 事実、松下幸之助や本田宗一郎は、大学はおろか高校すら卒業していませんが、世界的なトップ企業をつくり、数万人、数十万人の従業員を統率する経営者になりました。 幼い頃から視野を広げるためにも、学校教育の場で経営者の功績を教材に使ってみてはどうかと思うのです。
「夢の経営者を具体的に思い描けるように発信することも大切だと思います」
野球少年がイチロー選手や王選手を目指すように、経営者になることを目標に掲げる小学生にとっても、象徴となるような人物がいるとよいですよね。 その年で一番、人材教育に成功した人を国が表彰するなど、夢の経営者を具体的に思い描けるように発信することも大切だと思います。

中部地域がさらに活性化するためには、「働く人々が世界中で最も輝いている地域」と言われるくらい、楽しい職場をつくらなくてはいけないと思います。
私は、モノづくりを学ぶ工場大学の設立をしてはどうかと思っています。
中部を代表する企業が中心となり、世界中の人々が憧れる工場大学をつくる。
例えばAゾーンでは、車づくりの名人に指導を受けながら自分だけの車づくりに挑戦できる。
Bゾーンでは、有名な女優さんが一生乗りたくなるような、フルオーダー車を製造中など、「一人屋台生産」方式を活用して、個々のニーズに沿った究極の製品をつくる。
他方Cゾーンでは、世界一速いラインを使って車づくりを披露するなど、ディズニーランドにも劣らないエンターテインメント性の高い工場をつくるのです。
世界が注目する工場が実現すれば、働いている人々は自分の会社や企業に誇りを持つようになり、モノづくりの現場の士気も上がるのではないでしょうか。
“10万円払ってでも見学したい”
“あの工場でつくられた車に乗りたい”
“あんなに生き生きと働く人がつくった車に乗ってみたい”と、世界中の人々が憧れるロマンに満ちた工場をつくることで、企業にも中部地区にもはじめて付加価値が生まれてくるのだと思います。
中部に行けば他では学べないようなことが勉強できる、中部にいる人はみんな活力に満ちている。
そういう理想郷をつくることで、世界中の富豪や観光客が中部へ集まれば、経済も活性化するはずです。
「一人ひとりがエネルギーの使い方や大切さについて考えなくてはいけない時代がきていると思います」

企業や経済の活性化のために、エネルギーを有効に利用することは不可欠です。 だからこそ、企業がエネルギーの使用について見直し、工夫することは企業努力として当然のことですが、一人ひとりがエネルギーの使い方や大切さについて考えなくてはいけない時代がきていると思います。
工場の「ムダとり」や「改善」の際に取り入れたジャスト・イン・タイム、つまり“お客様の必要なものを、必要な時、必要なだけ供給する”という考え方をエネルギー利用の際にも取り入れる。 モノづくりもエネルギーも、ムダを発見しながら資源を有効に利用するという意識を高めることで、真の価値が見えてくるのではないでしょうか。

「一人ひとりがエネルギーの使い方や大切さについて考えなくてはいけない時代がきていると思います」
私たち中部電力は、お客さまの現場での課題をカスタムメイドで解決するエネルギー・ソリューションで、あらゆる企業活動を支援したいと考えています。